『バレンタインメイクで恋する女の子のおはなし』第1話
❶
私、A子。高校1年生。
バレンタインが近づいて、昼休みの教室はなんだかいつもよりそわそわした雰囲気。
「ねえねえ、今年は誰にあげるの?」
「チョコ交換しようね!」
女の子たちは、チョコの話で楽しそうに盛り上がっている。
「A子はバレンタイン何作るの?」
一緒にお弁当を食べていた親友のC奈が聞いた。
「私は、くまさんのドーナツ!」
市販のチョコドーナツに、耳や鼻を飾りつけてくまの顔にするつもりなんだ。
「えー、かわいい!出来上がりが楽しみだなあ」
「うまくできるといいけど!C奈は?」
「私はトリュフだよ」
「わ!おいしいやつ!」
2人でお弁当をつつきながらおしゃべりしていると、後ろの席から女の子たちの話し声が聞こえてきた。
「私、S志くんにチョコ渡したいなあ」
「わかる!S志くんかっこいいよね」
「私も推してる〜」
「でも、女子とあんまり話さないし、手作りチョコなんて受け取ってくれるのかなあ」
「たしかに。断られたら気まずいし、渡すの勇気いるよね…」
S志くんは、同じクラスの男の子で、入学した頃からその端正な顔立ちで話題になっていた。
当の本人はというと、イヤホンをしたまま机に突っ伏している。
その横では、数人の男子が騒いでいた。
「S志はいいよなあ。どうせ女子からチョコいっぱいもらうんだろ?」
「くう〜、おれだって女子のチョコほしいよ!」
その様子を見ていたクラスの委員長 T崎くんが、
「なるほど、需要と供給が一致していないのか…難しい問題だ」
と言ってメガネをクイっとする。
そのとき。
「みんな、ちょっと聞いて!」
教壇の上に、B美が立った。
なんだなんだ、とクラス中の視線がB美に集まる。
「もうすぐバレンタインだよね。
でも、女子は男子にチョコあげたいけど勇気が出なくてあげられない、
男子は女子からチョコもらいたいけどもらえない、って悩んでると思うの!
そんな悩める男女に、私から提案があります!」
おお〜っ、と男子から歓声が上がった。
「金曜日のバレンタイン、放課後近くのショッピングモールでみんなでチョコ交換会をしませんか。
もちろん、参加は自由!参加者には全員、私とI香からチョコを渡します」
B美と、そばに立っていたI香が目配せして微笑む。
「うおー!チョコだ!」
「全員もらえんの!」
男子が盛り上がる。
「これ、S志くんも来るかな」
「みんなで交換するなら本命にも渡しやすそう!」
女子もざわざわ、興奮を隠しきれない様子。
「素晴らしい解決策だ」
T崎くんも指先をそろえてパチパチと拍手する。
「もちろん、女子はあげたい人にだけチョコをあげればいいし、逆チョコもアリだよ!」
B美の声に、男子が反応する。
「まじ?おれも手作りチョコ作っちゃおっかな〜」
「げ!いらねえ」
「別にお前にはやらねーし!」
B美が、クラスのグループラインで出欠を教えてくださいと言ったところで予鈴が鳴ったので、みんな次の授業の準備をし始めた。
でも、教室の中には突然のイベントにわくわくするような、浮き足立った雰囲気が残っていた。
❷
「ねえねえ、ちょっといい?」
休み時間、B美に声をかけられた。
手招きされて廊下へ出る。
なんだろう。普段B美に話しかけられることなんてないから、ちょっと緊張する。
「突然だけど、A子ちゃん、バレンタインはK太にチョコあげるの?」
廊下の隅まで行って、くるっと振り向いたB美が言った。
え…?K太くん?
予想外の質問に動揺する。
「そんなこと、考えてなかったけど…」
K太くんは、私の好きな人。同じクラスで、B美と仲がいいんだ。
B美は、私がK太くんを好きなこと知ってるのかな。
もしかして、私のK太に手を出すな、とか言われる…?
ドキドキしながら返事を待っていると、
「あれ?あげないの?」
拍子抜けしたような答えが返ってきた。
「私てっきり、A子ちゃんの好きな人はK太なのかと…」
「あ、うん、それはそうなんだけど」
「あ、やっぱり?」
B美がにこっと笑う。
あれ?もしかしてこれは、カマをかけられたっていうやつ…?
「A子ちゃん、おせっかいを重々承知で言わせてもらうけど、
K太のことが気になるなら、このバレンタインはチャンスだよ!
あいつ、彼女いないし、まあ恋愛事には疎いかもしれないけど、いいやつだし…」
B美がぐっと顔を近づけて声をひそめる。
「A子ちゃんがK太にチョコ渡したいんなら、それとな~くK太がチョコ交換会に来るように誘導しておくから」
え、えええ!
思わぬ提案に、私、のけぞりかえる。
そんな心の準備、できてないよ~!
あたふたする私に、B美はぱちっとウインクしてみせた。
❸
チョコ交換会は放課後なので、女の子たちは授業が終わったら、
コスメを持ち寄ってみんなでメイクをすることになった。
メイク…普段学校ですることなんてないし、特別なイベント気分でちょっとわくわくする。
いつもより、ちょっとでもかわいい姿になれたらな…。そしたら、K太くんに…。
そこまで考えて、顔がぽぽぽっと熱くなる。
私、K太くんにチョコを渡すことにしたんだ。
バレンタインといえば友チョコしか渡したことのなかった私だけど、
あの日B美に言われてから考えた。
気になる相手ともっと仲を進展させたいなら、黙って待ってるだけじゃだめだよね。
今までは、教室で見かけるだけで、たまに話せるだけで、じゅうぶんうれしかった。
でも今回は、ちょっと勇気を出して一歩踏み出してみたくなったの。
もちろん、いきなり告白とかは無理だけど!
もっとK太くんのことを知りたいし、私のことも知ってほしいな。
そうだ、メイク!
私ははっと思い出して、今日背負っていたリュックの中にがさごそと手を突っ込んだ。
「これこれ!」
取り出したのは、バレンタインにぴったりのチョコレートみたいなアイシャドウ!
学校帰りにドラッグストアで買ってきたんだ。
SWEETS SWEETSのPremium Gateau Shadow(プレミアムガトーシャドウ)っていうアイシャドウで、
ピーチクランチバーっていうコーラルピンク系のカラーがとってもかわいくて、ひとめぼれして買っちゃった。
5色入り1,320円(税込)で、ベースカラーにメインカラー、締め色、涙袋用のキラキララメまでそろっていて、これ一つでアイメイクが完成しちゃう優れもの。
左上のベースカラーは、きめ細やかなパール系のシャドウで、まぶたに仕込むと目元をパッと明るく見せてくれる。
右上のメインカラーは、程よいラメ感と肌なじみの良いコーラルカラーでうるうるお目々を演出してくれる。
右下は、メインのコーラルピンクともよくなじむ赤みブラウン。
濃すぎない絶妙なカラーだから、下目尻に塗ったりベースカラー代わりに使えたりして万能なんだよね。
左下の締め色はしっかり濃いチョコみたいな色。
そして左真ん中にはリボン型の白いラメがあって、涙袋にのせたり上まぶたの中央にのせたりして華やかなキラキラメイクができるの。
ラメは派手すぎない上品な輝きだから、普段使いにもぴったりなんだ。
このアイシャドウを使って、今ちょっとだけメイクの練習してみよう。
鏡の前で、アイシャドウの裏に書いてあるメイクアップレシピの通りに色を重ねる。
ああ、やっぱりコーラルピンクのカラーかわいいな。
でも、濃い色を塗り重ねると、どんどん目元がくすんできたような…?
しかも、レシピの通りに下まぶたの目頭側にラメをのせたら、なんだか目が腫れてるように見える。
あれ、おかしいな。
メイクをすればするほど、目は濃く、ケバくなっていく。
これじゃ、すっぴんの方がまだマシな気がするよ…!
レシピ通りのメイクが似合わない。
バレンタイン直前に舞い降りた悲劇…!
私、どうしたらいいの!?
(『バレンタインメイクで恋する女の子のおはなし』第2話に続きます。)
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読んでくださりありがとうございました!✨
とても久々の投稿で緊張していますが、続きのおはなしも準備でき次第投稿したいと思いますので、
気になるよ〜という方がいらっしゃったらぜひチェックしてくださると嬉しいです!
過去に投稿したA子ちゃんやK太くんたちのおはなしは、こちらのハッシュタグからご覧いただけます!
#リトルミイのストーリー
サムネがなんというか…結構素朴()な感じなのですが、温かい目でご覧ください(◦ˉ ˘ ˉ◦)
それではまた、ご縁があれば次の投稿でお会いしましょう🪽
やっほーサムネ私はミイちゃんらしさがあってバレンタインらしくて好き!( *ˊᵕˋ)ノこの4年?2020年から色々あった!話したい〜よかったらインスタフォローしてねん🥰🥰