すずらん♡ 美容.恋愛ライター on LIPS 「冬に花火　作:すずらん🌸 「よかったら、僕と明日の夜、 ..」

冬に花火　作:すずらん🌸 「よかったら、僕と明日の夜、 花火に一緒に行っていただけませんか？」 雪が、 ほろほろ舞い落ちる 寒い朝、 突然、その人は言った。 「え？冬に花火ですか？」 私は、思わず驚いて 彼の顔を覗き込む。 そうすると、 彼は、「にっこり」と微笑んで、 「冬の花火は、 空気がとても澄んでいるから 色がはっきり出るんですよ。 冬になったら、あなたと 花火に行こうと 春から僕は決めていました。」 と、 まだ完全に 明るさを取り戻していない 薄曇りの空を じーっと 見ながら その人がつぶやく。 「ちょっと待って。 冬に花火？ 春から決めていた？ どういうことですか。」 いつもと変わりのない 通勤電車を待つ 駅のホームで いつも同じ 電車の車両に乗る ちょっと くたびれた紺色のスーツの 地味だけど 優しそうな男の人。 いかにも 真面目そうな サラリーマンからの いきなりの誘い。 「そういえば、 この人、 春はもうちょっと、 スーツも パキッとキメていたような。 やっぱり 男の人のお仕事って 大変なのかな。」 と、 どうでもいいことを 思い出したら、 通勤する電車が到着した。 「それでは、明日の夜 19時に改札口で。 えっと、寒いかもなので 厚着でお願いします。」 「え？ちょっと待って・・・」 と、 言うか言わないか わからないうちに いつもの満員電車で 私は、もみくちゃ。 もう、 彼がどこにいるかもわからない。 そして、 私は少し頭が パニックになりながらも いつもどおり職場に着いた。 会社の仲良しちゃんに 話そうかなと思ったけど 「いたずら」や「きまぐれ」や「ナンパ」みたいな感じで 声をかけられた可能性もあるし　 そもそも 自分でも この状況が理解できていないので 誰にも言わなかった。 てか、 「こんな寒い冬に 花火を観ましょう」 なんて、 ナンパある？ 次の日、 普通だったら知らない男性からの誘いにいきなり 乗るなんてないけど、 どうしても「冬の花火」が気になって、 仕事が終わり電車を降りると 待ち合わせの改札口まで行く。 もちろん、降りるとこであるので 待ち合わせなくてもいくんだけど。 夕方の18時50分 改札口を出ると、すでに彼は待っていた。 「厚着」をしてきてといっていたので スカートじゃなくパンツを履いてきたが、 彼は、「まさに冬」というような ノースフェイスのダウンジャケットに ニット帽まで被っている。 まるでスキーか何かにいくような格好で 花火を観に行くということがおかしくて 思わず笑ってしまった。 「冬の花火は寒いので、 よかったら、僕のですが、どうぞ。」 その人は、そう言って笑い、 自分と色違いのダウンジャケットとニット帽を渡す。 それには、まだ値札が付いていたんだけどね。 そう言って、毎朝、顔を合わせる私たちは 自己紹介も忘れて、そのまま 「隣の県の冬の花火大会」まで電車で観に行ったのよ。 「ねえねえ、おばあちゃん、花火どうだった？ 冬の花火って、あったかいの？」 かわいい孫娘を膝に座らせて 「花火」の絵本を読んでいたときに ふと思い出して 自分の昔話を話してみる。 「やっぱり冬だからね。お外は寒かったから 花火が空に咲いても寒かったよ。 でも、おじいちゃんと お手々を繋いでいたから おばあちゃんの手は　ほかほかだったよ」 ・・・・・・ というのが、 私の理想の恋。 仲良しちゃんは 「え？それってやっぱりナンパじゃん」って 笑うけど、 どの恋のはじまりも どちらかが「声」をかけるわけだから、 限りなく、純粋である「ナンパ」なんだけどね。 愛になれば「ナンパ」も「運命の恋」。 最初は、軽い恋の遊びでも 本当の恋になれば 運命の恋。 だって、 「花火は夏より、冬のほうが心に残るでしょ？」 あなたとの非常識なこの恋は 「冬に花火」。 🌸インスタのプロフィールのURLから 自作の短編小説を 自分の「声」で、詠んでいます🌸 いつも ありがとうございます🌸🌸 #短編小説#小説#ショートストーリー#恋#恋愛#朗読#standfm #standfmはプロフィールから聴いてね