すずらん♡ 美容.恋愛ライター on LIPS 「それでも、空ばかり見てる。 作　すずらん🌸 ..」

それでも、空ばかり見てる。 作　すずらん🌸 空を見ながら歩いていたら、 小さな穴に落ちそうになった。 「おっとと、危ない。」 そうだった。 歩いているときは、 ちゃんと前を見ないといけないんだった。 だから 前ばかり見て歩いていたら 今度は、大きな穴に落ちた。 「まいったな。」 だけど、空を見上げると ラッキーなことに たくさんの人が穴の周りを歩いていた。 「これは、なんとかなりそうだ。」 大きな声で叫んでみた。 「おーい、助けてください。 空ばかり見ていたら、穴に落ちました。」 だけど、 私の声には誰も気づかない。 「あれ、聞こえないのかな。」 もう一度叫んでみた。 「おーい、助けてください。 空ばかり見ていたら、穴に落ちました。」 そうしたら、たくさんの人が穴の中をのぞきこんだ。 私の声は、大きくて響くのが特徴だ。 そもそも聞こえないわけがない。 だけど、 穴の上の人達はみんなこんなことを言った。 「かわいそうに、この穴はよく人が落ちます。」 口を揃えてそういうと、 またどこかへ行ってしまった。 その後も たくさんの人が 穴の中をのぞいたけど 慌てて私と目を逸らして そのまま歩き去った。 「そうか。この穴は人がよく落ちる とてもこわいこわい穴なんだな。」 はじめて、そこで気づいた。 「そうだ。友達に連絡しよう。」 スマホは繋がる。 最初から、電話しとけばよかった。 だけど、 不思議と誰も電話に でなかった。 「そうか。忙しいのか。とりあえず、LINEしとこ。」 しばらくして「既読」になった友人もいれば、 「未読」のままの友人もいた。 そこで、さらに気がついた。 私は空ばっかり見ているから 気づかなかったけど、 もしかしたら、みんなは この危険な穴を知っていたのではないか。 「はあ、もう、一巻（いっかん） の 終わり。」 「こんなことなら、バッグにクッキーか なにか甘いものを入れておけばよかった。」 「そうそう、あんなに好きだった あのコンビニのプリンは 嫌いになったんだよね。」 だから、 もし、この穴に落ちたとき、 クッキーを持って食べたら きっと、食べるたびに 嫌なことを思い出してしまう。 なので、やっぱり何もなくてよかったかも。 そんなこんなで「穴」から抜け出す手段を いろいろ考えている。 おとなしく救助を待っていても しょうがないので、 優しいお姉ちゃんが歌っていた歌を 楽しそうに大声で歌ってみた。 「助けてください」っていうと みんな怖くて逃げるから なんでもない「言葉」を紡いで（つむいで） 朗読してみることにした。 楽しそうにしていれば 必ず、人はやってくるから。 大丈夫、大丈夫、 あきらめてはいけない。 でも、 お腹が 空きすぎて（すきすぎて） 大きな声が ぜんぜん出ない。 だから、 紙に書いて、 空に投げた。 たくさんの人が その紙を開けて中身を見たけど 興味がないようだ。 でも あきらめず、その紙をどんどん 空に投げた。 そしたら、 「なんだ、なんだ」と人が集まって 噂になった。 「これは、すっかり忘れていた あの穴に落ちた人の 書いたものじゃないか。」 いつのまにか それが噂になって 今度は人がわんさか集まった。 紙を開いて「声」に出して 読んでくれる人も ちらほらいるようだ。 それから、 LINE既読済みの友人達が 私を一生懸命励ましてくれた。 そのおかげで 救急車やパトカーよりも早く でっかいクレーン車に乗った人が 急に現れた。 「大変な騒ぎになっているようですね。 ここは、とても深くて危険な穴がある場所だと 有名なんです。 空ばっかり見てる人は 必ず落ちる穴なので これからは注意してください。」 クレーン車のお兄さんはそういって笑って 私を穴の外に出してくれた。 そして、こう言った。 「もし、穴にまた、落ちたら、いつでも僕を呼んでください。 そこらへんの穴はとりあえず、埋めておきます。」 だけど、 下ばかり見て、用心するばかりのお散歩は どうしても飽きてしまう。 だから、 今日も、 気づいたら 空ばかり見てる。 それでも、 空ばかり見てる。 🌸プロフィールから「私の声」で 聴けます🌸 #朗読#朗読劇 #朗読会 #詩#エッセイ#物語#作家#ポエマー#すず読#すずらん