
“藻”が美肌のヒント!? 次にくる注目成分『フコキサンチン』の魅力を研究者に聞いてみた
シワやハリ不足など、年齢とともに増える肌のお悩み。実はそれ、紫外線を浴びたあとの肌の中で進む「ダメージの連鎖」が関係しているんです。
そして今、この連鎖にストップをかける可能性のある成分として注目されているのが、“藻(も)”に含まれる「フコキサンチン」です。今回は、東京工科大学とサキュレアクト株式会社の共同研究でわかってきた、フコキサンチンの知られざるパワーをご紹介します。
藻に含まれる成分「フコキサンチン」が、肌研究で注目されている!?

肌の老化の8〜9割は、紫外線による「光老化」が原因といわれています*。そんな光老化によるエイジングサインに、新しい角度からアプローチできると期待されているのが「フコキサンチン」。最新の研究で、肌の中で起こる“ダメージの連鎖”をケアする可能性が見えてきました。
今回は、東京工科大学の吉田雅紀教授と、化粧品の原料開発を手掛けるサキュレアクト株式会社 代表・塩原祥子氏にインタビュー。フコキサンチンのチカラと、アフターサンケアの新たな可能性について話を伺いました。
*Flament F ORCID logo, Bazin R, Laquieze S, Rubert V, Simonpietri E, Piot B「 Effect of the sun on visible clinical signs of aging in Caucasian skin」(2013年)
フコキサンチンってどんな成分?

フコキサンチンとは、わかめや昆布などの褐藻(かっそう)類に含まれる天然の色素成分です。肌にダメージを与える活性酸素を抑える、抗酸化作用を持っています。
しかし、海藻に含まれる量はごくわずか。とても希少なため、これまで美容分野ではあまり注目されてきませんでした。そんな状況をガラリと変えたのが、今回の研究で使われた海洋プランクトン(微細藻類)の一種「ソラリス」です。
ソラリスは、目に見えないくらい小さな藻であり、わかめや昆布などの大型藻類に比べてフコキサンチンを多く含んでいるのが特徴。サキュレアクト社が国内での安定的な培養、抽出・精製技術を確立したことで、美容成分としての解析・活用に向けた研究が進みました。
ビタミンCやアスタキサンチンとは何が違うの?

抗酸化成分というと、ビタミンCやアスタキサンチンが有名ですが、実はそれぞれ“肌の中で働く場所(得意なポジション)”が異なります。カギになるのは、水になじみやすいか、油になじみやすいかという性質(極性)の違い。
- ビタミンC(水溶性):水になじむため、「細胞の内側(細胞質)」や「細胞の外側」に溶け込んで働く
- アスタキサンチン(油溶性):油になじむため、細胞やミトコンドリアの膜の内部に入り込む
- フコキサンチン(絶妙な極性):細胞やミトコンドリアの「膜の表面」に集まって働く
紫外線を浴びた肌の中では、ダメージを与える活性酸素がたくさん作られます。その主な発生現場は、細胞の膜付近や、細胞内部(細胞質)に存在するミトコンドリアの膜付近。その場所こそ、フコキサンチンが得意とするエリアなんです。
“フコキサンチンなら、ほかの抗酸化成分とは異なるアプローチで肌を守れるのでは?”仮説を立てた研究チームは、細胞レベルでの実験を開始しました。
研究で見えてきた!フコキサンチンが魅せる「ダブルの美肌アプローチ」

実験では、フコキサンチンを取り込んだ表皮細胞を用意。紫外線(UVB)を当てて強く反応させたグループと、あえて紫外線に当てず単に細胞に存在させたグループを比較し、細胞にどんな変化が起きているのかを検証しました。
その結果、“美肌にアプローチする2つの作用”が明らかに!
- エイジングサインにつながる「ダメージの連鎖」を抑える
- すこやかな肌づくりに欠かせないタンパク質が増える
一体どういうことなのか、詳しく見ていきましょう。
発見①:肌の“ダメージの連鎖(SASP)”を抑える!

ダメージを受け“老化”した細胞は、周りの細胞に「トラブル発生!」と炎症シグナルや分解酵素を発信します。これが、肌老化を招く一因といわれる「SASP(サスプ)」という現象です。
老化細胞が溜まり、炎症シグナルが大量に発信され続けると、周囲の元気な細胞にまでダメージが拡大します。例えるなら、「箱の中の“腐ったみかん”」のようなもの。1つ腐ると周りの元気なみかんまで傷んでしまうように、1つの老化細胞が、周囲の細胞にまで悪影響を与えてしまうんです。
そんななか、今回の実験では、フコキサンチンを加えることで、SASPによって引き起こされる炎症シグナルや分解酵素の増加を抑えられることが判明!フコキサンチンが、シワやたるみにつながる「ダメージの連鎖」をケアする可能性が示されました。
発見②:肌づくりに欠かせないタンパク質が増える

さらにうれしい発見がもう1つ。フコキサンチンを細胞に加えると、すこやかな角層づくりに欠かせない「インボルクリン」というタンパク質が増える傾向が見られました。
「美肌のためにはターンオーバー(肌の生まれ変わり)を整えることが大切」とよく聞きますが、単にスピードを速めればよいわけではありません。大切なのは、しっかり成熟した良質な細胞が角層になること。
インボルクリンは、細胞がすこやかに成熟するプロセス(分化)で生まれる、重要なタンパク質です。フコキサンチンには、このインボルクリンを増やし、細胞の成熟をサポートする作用が見られました。
このことから、フコキサンチンには、「ダメージの連鎖を抑える」と「すこやかな肌づくりを支える」という、ダブルのアプローチに期待が高まります。
フコキサンチンは「アフターサンケア」の定番成分になるかも

今回、研究チームが驚いたのは、紫外線を当てていない細胞でも、もともと微量に発生している炎症物質がしっかり抑えられたこと。通常は強い刺激を与えないと差が出にくいため、フコキサンチン自体が本質的に強い抑制作用を持っていることがわかったのです。
「フコキサンチンは想像以上の抑制作用を持っていることに驚きました。肌は紫外線を浴びた直後ではなく、そこから時間をかけて活性酸素やSASPの影響でダメージが進行していきます。フコキサンチンは、紫外線を浴びてしまった『後』に進行するトラブルを防いでくれる成分として期待できます」(吉田教授)
今回は細胞レベルの研究ですが、次世代のアフターサンケア成分として、フコキサンチンが取り入れられる日も、そう遠くないかもしれません。
「藻(ソラリス)」には、まだ未知の可能性がある
この共同研究結果を受け、現在サキュレアクト社では、フコキサンチンの可能性に着目した化粧品原料「ソラルナ®エキス」の開発を進めているのだそう。とはいえ、今回の研究で明かされたのは、フコキサンチンが秘める可能性のほんの一部にすぎません。
そして、その母体である「ソラリス」には、フコキサンチン以外にも私たちの肌をすこやかに導く未解明の成分が隠されていると考えられており、研究チームは今後も探究を続けていくとのこと。
海からの恵みである“小さな藻”が、私たちのスキンケアをどう変えていくのか。これからの展開から目が離せません!
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