日本版コスメティックバレー?“日本一コスメビジネスがしやすい都市”を目指す佐賀県の挑戦のサムネイル

日本版コスメティックバレー?“日本一コスメビジネスがしやすい都市”を目指す佐賀県の挑戦

今、佐賀県が“コスメの都市”として注目を集めていることをご存知ですか?佐賀県では、自治体・大学・企業が連携し、日本、さらにはアジアで一番のコスメ産業地を目指す挑戦として『コスメティック構想』が進められています。

プロジェクト開始から10年以上。原料開発や企業支援、人材育成などを通して、佐賀発のコスメビジネスが着実に広がり、いまでは大手化粧品メーカーからも注目を集める存在に。

今回は、日本で唯一コスメ産業の専門部署「コスメティック産業推進室」をもつ佐賀県に、これまでの実績とこれから描く未来への展望について取材しました。

LIPS編集部
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コスメ産業の一大拠点を目指す!佐賀県『コスメティック構想』とは?

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2013年にスタートした『コスメティック構想』は、日本のコスメ産業の一大拠点をつくることを目指し、佐賀県が進めているプロジェクトです。

コスメティック構想の目標
  1. 唐津市や玄海町を中心とする佐賀県、そして北九州地域にコスメティック産業を集積させる
  2. 化粧品に欠かせない“自然由来原料の供給地”となる

この2つの目標を掲げ、産・官・学が連携。“日本一コスメビジネスがしやすい都市”をつくるため、さまざまな取り組みをおこなっています。

日本の都道府県でコスメ産業の専門部署を持つのは、佐賀県だけ。しかし、なぜ“コスメ”なのでしょうか。ほかに類をみない一大プロジェクトが始まった背景には、フランスとの交流がありました。

佐賀県はコスメ産業にぴったりな場所だった

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佐賀県が『コスメティック構想』を立ち上げるきっかけとなったのが、フランスにある“コスメティックバレー”の前会長、アルバン・ミュラー氏が佐賀県唐津市を訪れたことでした。

コスメティックバレーとは
  • フランス中部・シャルトル地域に広がる世界最大規模の化粧品産業集積地

コスメティックバレーにはロレアル・パリやシャネルといった名だたるブランドをはじめ、研究機関や原料メーカー、生産工場、パッケージ関連企業まで、化粧品に関わる企業が集積しており、その数はおよそ1,500社にも及ぶといわれています。

そんなコスメティックバレーの前会長・ミュラー氏が唐津市を訪れた際、佐賀県の豊かな自然環境、そしてアジアの中心に位置し、輸出入にも有利な地理的条件に大きな可能性を見出し、「佐賀県は日本版コスメティックバレーになれる」と提言してくれたのだそうです。

2013年ジャパン・コスメティックセンター(JCC)を設立

そして2013年には、ジャパン・コスメティックセンター(JCC)を設立。これは、『コスメティック構想』を一過性の取り組みで終わらせず、長期的に推進していくために設立された、産・官・学が連携する組織です。

自治体の取り組みは、担当者の異動などによって、地域や企業との連携が途切れてしまう可能性があります。JCCはそうした課題に対応し、プロジェクトを持続的に進めていくために立ち上げられました。

佐賀県・唐津市・玄海町をはじめ、地元の大学、さらには県内外の多くの企業が参加。産・官・学が一丸となり、日本一のコスメ産業地を目指す取り組みが本格的に動き始めたのです。

具体的にはどんなことをしているの?『コスメティック構想』4つの取り組み

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(左)村上さん/(右)東さん

では、具体的にどのような取り組みがおこなわれ、これまでにどんな成果を上げてきたのでしょうか。コスメティック構想の4つの取り組みとその実績を、佐賀県コスメティック産業推進室の東さんと村上さんに取材しました。

  1. 企業が集まり、つながる仕組みづくり
  2. 佐賀の自然でコスメの原料をつくる
  3. コスメ産業に携わる人材の育成
  4. 海外との連携・佐賀コスメの発信

①企業が集まり、つながる仕組みづくり

コスメティック構想の一つ目の柱が、コスメ産業の集積です。佐賀県が目指しているのは、「コスメビジネスがしやすい都市」をつくること。

そのために、企業誘致や地元企業の支援を通じて、コスメ産業のサプライチェーンを地域内に築く取り組みを進めています。

大手企業からスタートアップまで“伴走型”でサポート

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企業誘致は、2013年の構想スタート当初から力を入れてきた取り組みのひとつ。これまでに、多くの大手化粧品関連企業が佐賀に拠点を構えてきました。

  • 東洋ビューティー
  • 久光製薬研究所
  • THREE 精油蒸留所 など

また、これからコスメ産業に参入したい企業やスタートアップへの支援も進化しています。プロジェクト開始当初は「佐賀コスメティックアクセラレータープログラム」として、スタートアップ企業に寄り添う伴走型支援をおこなってきました。

しかし、コスメビジネスを軌道に乗せるには、“横のつながり”も重要。そこで2025年には、支援型プログラム内容を刷新し、月1回の交流会(全国からオンラインで参加可)などを通じて、企業同士が横につながる仕組みづくりへとシフト。コスメビジネスに携わる人や企業が自然と集まり、連携が生まれる環境を整えています。

コストカットをしながらスピーディーなものづくりを実現

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化粧品企業を集積させるメリットは、これだけではありません。化粧品づくりには、原料を育てる農家、原料メーカー、資材メーカー、それらを扱う商社、製品を形にするOEM・ODMなど、多くの企業が関わります。

OEM/ODMとは
  • OEM:製造を受託する企業
  • ODM:企画・開発から製造までを担う企業

こうしたサプライチェーンを地域に集約すると、輸送コストやCO₂排出量を抑えながら、スピーディーにものづくりすることが可能に。JCCは、こうした多様な企業同士をつなぐハブとして機能し、企業間の連携を後押ししています。

このアイディアの基盤となったのが、唐津市にある「唐津コスメパーク」です。もともと化粧品関連企業5社が集まる小規模な企業集積地だった場所に名前を付け、サプライチェーンの拡大と強化を推進。地域内で原料から製品までをつなぐ体制を整備しているのだそうです。

②佐賀の自然でコスメの原料をつくる

二つ目は、県内素材の原料化。自然由来原料の供給地を目指す取り組みです。

佐賀県では、県内に広がる豊かな自然資源のなかから、化粧品原料として活用できる素材を探し、研究・開発につなげています。

その一翼を担うのが、佐賀県工業技術センターに設置された『食品コスメ部』。コスメに特化したこの部署では、大学や研究機関と連携し、「コスメになりうる素材はないか」という視点で検証を重ねています。

研究によって有効性が確認された素材は原料メーカーへ紹介。新たな価値を持つ化粧品原料として活用されているのです。

アップサイクル素材の活用も

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これまで、唐津市・加唐島(かからじま)で育てられた椿を使った化粧品づくりに成功するなど、佐賀県発の原料開発は着実に成果を上げてきました。

そして近年、特に力を入れているのが「アップサイクル素材」の活用。佐賀県では、捨てられてきた農産物の葉や茎、皮などに着目し、化粧品原料として使えないか研究を重ねています

アップサイクルとは
  • 本来は捨てられてしまうはずのものや未利用資源に新たな価値を与え、新しい製品へと生まれ変わらせること

これまでに、白いちごの葉や茎、産業廃棄物として処理されがちなゆずの皮、形を整える過程で切り落とされるアスパラガスなどの不要部位を、化粧品原料として活用することに成功。

SDGsへの関心が高まるなか、アップサイクル素材を使った化粧品は業界内でも注目されており、化粧品メーカーや原料メーカーからの問い合わせも増えているそうです。

地域の課題も化粧品で解決

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佐賀県をはじめ、全国的に問題となっているのが耕作放棄地。地域の景観や環境への影響だけでなく、農業の継続という点でも大きな課題となっています。

耕作放棄地とは
  • 本来は農地でありながら、長期間にわたって作物が栽培されず、そのまま放置されている土地のこと

佐賀県では、こうした耕作放棄地で育った資源に目を向け、新たな価値を生み出す試みを進めています。

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そのひとつが、耕作放棄地に残るみかんの木の「花」を化粧品原料として活用する取り組み。食用としての出荷を前提としないため農薬の影響を受けにくく、香り豊かなみかんの花は化粧品原料としての可能性を秘めていることが、研究によって明らかになってきました。

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また2024年には、自然環境や土壌条件は理想的でありながら耕作放棄地となっていたエリアを活用し、国産オーガニックブランド「THREE(スリー)」がハーブ栽培をスタートしたことも話題に。

使われなくなった土地を、再び価値を生み出す場所にする。佐賀県では、コスメを通じて地元の課題を解決し、未来を育てる“アップサイクル”に取り組んでいます。

③コスメ産業に携わる人材の育成

コスメティック構想が目指しているのは、場所や資源を整えることだけではありません。その土台を支える「人」を育てることにも、力を入れています。研究開発から製造、ビジネスまで、コスメ産業を持続的に発展させていくためには、専門知識を持った人材の存在が欠かせません。

化粧品を多角的に学ぶ、日本初の学部を設立

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2021年には、佐賀大学に「化粧品化学講座」を設立。化粧品研究の第一人者である徳留嘉寛教授を迎え、大学と連携しながら、本格的な化粧品研究者の育成がスタートしました。

さらに2026年には、佐賀大学に日本初となる「コスメティックサイエンス学環」の設立も予定されており、教育・研究の両面からコスメ産業を支える体制が整いつつあります。

高校生を対象としたセミナーも

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また、次世代を担う若い世代へのアプローチも積極的におこなっています。

JCCでは、毎年高校生向けのセミナーを開催。研究者や営業職などさまざまな立場のプロフェッショナルを招いたり工場見学を開催したり、現場に触れながら「コスメビジネスにはどんな仕事があるのか」をわかりやすく紹介しています。

東さんは「地元の人たちが佐賀で活躍できる場をつくりたい」と話します。「そして“ここで働きたい”と選んでもらえる地域にしていきたい」と、佐賀のコスメ産業で作る未来のビジョンについて語ってくれました。

④海外との連携・佐賀コスメの発信

コスメティック構想の4つ目の柱が、国内外との連携と佐賀コスメの発信です。

佐賀県は地域内で産業を育てるだけでなく、世界とつながることで、コスメ産業の可能性をさらに広げようとしています。

JCCは日本で唯一の海外クラスターへの窓口

世界には、フランスのコスメティックバレーをはじめ、化粧品産業が集積する「クラスター」が各地に存在します。そうしたクラスター同士をつなぐ国際的なネットワークが、Global Cosmetic Cluster(GCC)です。

化粧品分野のイノベーションに特化した世界初の国際クラスターネットワークとして設立され、経済・技術・人材などの情報が実質的に交流する国際プラットフォームの構築を目的としています。

JCCは、GCCの日本唯一の窓口として、世界の化粧品産業クラスターと連携。海外の最新動向や知見を取り入れながら、佐賀のコスメ産業をグローバルな視点で成長させる役割を担っています。

佐賀コスメを広める活動も

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佐賀県では、素材や製法にこだわった魅力的なコスメが次々と生まれていますが、全国的にはまだ知られていない製品も少なくありません。

そこで、ポップアップストアの開催や日本最大級の化粧品・美容の総合展示会『COSME Week 東京』などのイベントへの出展を通し、コスメティック構想の取り組みはもちろん、「佐賀で生まれたコスメ」そのものの魅力を伝える活動を積極的におこなっています。

日本一からアジア一を目指して

こうした取り組みのもと、「日本一コスメビジネスがしやすい都市」を目標に歩みを進めてきた佐賀県。プロジェクト開始から10年余り、2024年には佐賀県内の化粧品生産額を2倍以上も拡大させることに成功しました。

そして今、佐賀県では“アジアで一番、コスメビジネスがしやすい都市になる”というビジョンを掲げ、新たなる挑戦がスタートしています。

世界から佐賀へ学びに来る学生や企業が増え、同時に佐賀で育った人材が世界へ羽ばたいていく。「自然と環境に配慮した化粧品」「スピーディーな生産体制」などを強みに、佐賀発のコスメはこれからさらに世界へと広がっていきそうです。

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